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グラクソ・スミスクライン(GSK:世界7位)は多数のグローバル製品を保有

事業部を増加して専門性を追及

イギリスの代表的な製薬企業であるグラクソ・スミスクライン(GSK)は、同業他社に先駆けて世界初の売上高100億ドルを達成した(1995年)ことで知られており、現在の世界市場売上ランキング1位のファイザーがその座を掴む2000年代前半まではメルクと激しいトップ争いを繰り広げていました。

世界市場売上ランキングで第2位となった2006年度を最後に順位は年々下がり、2022年度は7位となっています。しかし、新薬の開発が低迷しているわけではなく、抗HIV薬「トリーメク」、喘息治療薬「アドエア」、インフルエンザ治療薬「リレンザ」、帯状疱疹予防ワクチン「シングリックス」、ヘルペス治療薬「ゾビラックス」など、呼吸器、抗ウイルス薬、ワクチン領域におけるグローバル製品を多数抱えています。

グラクソ・スミスクライン(GSK)は、他のビッグファーマに比べて特に大衆薬(一般用医薬品:処方箋がいらない風邪薬など)事業に力を入れているのが特徴です。毎年、売上全体の25%前後を大衆薬が占めており、主力製品には日本でもブランド展開している「シュミテクト(歯磨き粉)」、「ポリデント(入れ歯安定剤)」、「ブリーズライト(鼻腔拡張テープ)」「ボルタレン(抗炎症薬)」、「コンタック(感冒薬)」などが挙げられます。

2018年には欧州最大手の製薬企業ノバルティス(スイス)から大衆薬事業を買収し、さらにはファイザー(アメリカ)との事業統合をするなどの大型のM&Aを繰り返し、2017年には大衆薬分野で世界トップのシェアを誇るジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)を抜いて1位の座を奪い取りました。

グラクソ・スミスクライン(GSK)は、ノバルティスから事業交換の形で大衆薬部門を買収する一方で、同社に抗がん剤の製品群を売却しており、今後も大衆薬事業への経営資源の集約が進むと推測されています。グラクソ・スミスクラインの事業別構成比は大衆薬事業が最も高い29%を占めており、続いてワクチン(20%)、抗HIV(14%)、呼吸器(11%)、免疫(2%)、その他(23%)となっています。

2020年の売り上げ収益は440億ドル。コロナによる巣ごもり需要で大衆薬事業が二ケタの伸び率を示しましたが、医療機関への受診者の現象の影響を受け、医療用医薬品はマイナスに。気管支喘息治療薬の「アドエア」が落ち込み、最大の主力製品である抗HIV薬の「トリーメク」も競合他社製品の登場で初の減収となったものの、帯状疱疹予防ワクチンの「シングリックス」、気管支喘息治療薬「ヌーカラ」などの売り上げが好調に推移したため、全体では前年比2%の増収を果たしました。

グラクソスミスクライン(GSK)の主力製品(売上順)
医薬品名 対象領域 売上高(21年3月期:単位は億ドル)
トリーメク HIVウイルス感染症 30
シングリックス (帯状疱疹予防ワクチン) 26
アドエア / セレタイド 気管支喘息 20
テビケイ HIVウイルス感染症 20
ヌーカラ 気管支喘息 13
ベネトリン 気管支喘息 10
ベンリスタ 膠原病 9
Bexsero (髄膜炎菌ワクチン) 8
Infanrix (小児用混合ワクチン) 8

上記のランク外では、COPD治療薬としては、1日1回吸入投与する初の3剤(ICS、LABA、LAMA)配合剤となった「テリルジー」が好調。2020年11月には気管支喘息(ICS、LABA、LAMAの併用が必要な場合)の適応拡大が承認され、今後の成長が期待されます(ピーク時売り上げ予測は250億円)。

10年前のグラクソ・スミスクライン(GSK):業績を支える喘息治療薬「アドエア」

医療用医薬品の分野でグラクソ・スミスクラインの業績を支えているのは、常に世界売上トップ5にランクインしている喘息治療薬「アドエア」です。同剤は長時間作用性吸入β2刺激薬「セレベント」と吸入ステロイド薬「フルタイド」の配合剤で、小児気管支喘息とCOPD(慢性閉塞性肺疾患)への適応拡大も実現しています。

アドエアは吸入器の使い勝手もよく、2008年まで田辺三菱製薬とのコ・プロモーション(2社連携による販売促進)を展開し、市場での認知度を急速に高めることに成功しました。その結果、経口抗アレルギー薬を含め同市場のトップ製品である小野薬品の「オノン」、MSDの「シングレア」および杏林製薬の「キプレス」と並び、市場トップクラスの製品に躍り出ました。

また2009年に発売した子宮頸がんワクチン「サーバリックス」の売上も好調です。子宮頸がんワクチンは、MSDの「ガーダシル」がグローバル市場で先行していましたが、日本国内ではGSKが先行発売し、市場へのワクチンへの認知度も高まっていることから今後の売上も順調に伸びると思われます。

そのほかでは、前立腺肥大症治療薬「アボルブ」、アレルギー性鼻炎治療薬「アラミスト」が、アレルギー疾患治療薬「サイザル」などが、増収要因として期待されています。

一方、SSRIの抗うつ薬「パキシル」は、ファイザーが販売する同系統の「ジェイゾロフト」などとの競争が激化している影響で、売上は減少しています。そのほか、インフルエンザ治療薬「リレンザ」は、2009年の新型インフルエンザ流行の反動から2010年以降の売上は1/3となっています。

日本市場での主力は「アドエア」や「サーバリックス」、新製品を中心に展開すると予想されます。新規開発品では、国内初の経口ロタウイルス予防ワクチン「ロタリックス」、軟部悪性腫瘍(軟部肉腫)の抗がん剤「ヴォトリエント(パゾパニブ 塩酸塩」、パキシルの徐放性製剤「パキシルCR(Controlled Release)」などがあります。

GSKは一層の専門性を追及することを目的として、2011年から中枢神経領域のみ独立していた事業部を「ジェネラルケア」、「呼吸器」、「中枢神経」、「スペシャリティケア&プリベンション」の4事業部体制に再構築しました。